変形性股関節症とは
本来、股関節の隙間は軟骨や滑液(関節の滑りを良くする役割)によって数ミリ程度間が空いております。軟骨や滑液によって動作をした時の衝撃を吸収してくれています。
しかし、繰り返しの衝撃や負担の積み重ねによって
軟骨や滑液がすり減っていき、関節の間が狭くなることでその間にある組織(筋肉、神経、靭帯、血管)が歩いたときやスポーツをした時などに
挟み込まれて、痛みが見られます。関節の間が狭くなる原因として、一次性と二次性の二つが挙げられます。
一次性とは
遺伝などによって生まれつき、関節の間が狭くなっている状態です。こういった場合は、幼少期から手術を行うか、装具などを使いながら、関節により負担がかからないように対応します。
二次性とは
姿勢不良や骨盤の歪み、筋力低下、関節の可動域の制限などによって動作時に関節への負担となり、関節の間が狭くなってしまう。
よく耳にする軟骨がすり減ることで症状が悪化することや痛みが出るといった情報は、実際にはあまり関係がありません。
確かに・・・
関節の間には軟骨があり、衝撃が伝わることで軟骨はすり減ります。
ですが、痛みを感じるのは神経に対して何か刺激が入ることで脳がそれを”痛み”として認識しますが、軟骨には痛みを感じる神経はありません。
ではなぜ関節の間が狭くなることで痛みを感じるのかは以下の説明で詳しく解説していきます。
変形性股関節症とは
変形性股関節症には、進行度というのがあり、関節の間が狭くなっている程度によって分かれており、進行度が進むにつれて、痛みが強くなる傾向にあり、手術の適応となる場合がある。
また、手術の適応になると、費用や時間の面において大きな負担となることや、術後に他関節への症状が見られることが多くあまり効率的な対応ではないため、早期に対応し進行を予防することが重要である。
変形性股関節症の症状
実際に変形性股関節症になった場合、関節の間が狭くなることで、歩いたときや階段の登り降りの際に衝撃が骨に直接的に伝わり、骨が削れていきます。
そうなることで、骨の中の骨髄や周囲にある筋肉や血管、神経などを圧迫してしまい、痛みにつながってしまいます。
また、変形性股関節症になることで見られる症状として、痛み、関節の可動域制限、筋力低下、筋萎縮(筋肉が痩せ細ること)、日常生活動作の制限によって生活の質が格段に低下していきます。
具体的な日常生活での制限
・歩行
・階段
・立ち上がり
・自転車の乗り降りや漕ぐ動作
普段の日常生活の動作で必要不可欠な動作に対して、制限が見られることが非常に多いです。また、状態が進行していくと痛みによって「しづらい」ではなく「痛くてできない」といった状態になる為、違和感がある場合でもこういったリスクがあるという認識をし、対処する必要があります。
変形性股関節症の原因
変形性股関節症の痛みの原因として日常生活や勤務状況などさまざまな原因から起こりうる障害だが、主な原因としては
・背骨や骨盤の可動性の低下
・睡眠障害やストレスによる生活習慣の乱れ
・体重が増加傾向にある方
股関節に症状が見られていますが、直接的に股関節に問題により起こる場合もありますが、主には他の部位からの影響によってみられる場合が多いです。
背骨や骨盤の動きが悪くなることで、動作時に股関節が代償的に動くことになります。それによって股関節が動き続けることで負担が大きくなり、関節の隙間が少なくなります。
生活習慣の乱れによって痛みが出ると言うのはあまり想像しにくいと思いますが、体内の循環が悪くなり、老廃物が体内に残っている状態になります。
老廃物が溜まっているので、自然と体重も増加していきます。体重が増加することで、それを支えるための筋力が備わっていなければ、関節に直接の負担になってしまいます。
こういった股関節以外の問題によって症状が発生してしまうため、痛みが出ている股関節に対してマッサージやストレッチ、電気治療などを行ってもまた戻ってしまうと言うのはなんとなく想像できるかと思います。
なので、そういった根本的な原因を評価してくれる整体にて治療を行うことが症状改善と今後の再発防止のためにはとても重要になってきます。
変形性股関節症の一般的な治療法
変形性股関節症の治療は状態によって大きく分かれます。
また治療する場所によってもできる内容が異なります。
さらに変形の進行があまりにも進んでいると、整体や整骨院では対応できなくなり、病院での手術を勧める場合があるため、早め早めの対応が必要になります。
初期の進行の場合:
病院では薬の処方やリハビリを行い、整体や整骨院ではマッサージやストレッチがメインの治療となります。
末期の進行の場合:
整体や整骨院でのマッサージでは帰って症状を悪化する場合があるため、病院にて手術の選択や杖、車椅子などの生活環境を変えながらなるべく負担がかからないように指導します。
変形性股関節症の当院での治療法
当院では①カウンセリングからどんな動作で痛みが出ているのか、②どこの組織からの影響で痛みになっているのか、③最後にそこが原因となっている根本的な原因はどこからきているのかを評価していきます。
①どんな動作で痛みが出ているのか
生活習慣は人によって異なり、痛みが強く出てくる動作も一人一人異なってきます。
なので、初めに痛みが出ている動作を確認していき、施術をしていきながら動作の痛みが変化するのかを評価していきます。
②どこの組織の影響で痛みが出ているのか。
①にて施術を細かく行なっていきながら、どこの組織(筋肉、神経、靭帯、腱など)から痛みが出ているのかを評価していきます。
股関節には筋肉や靭帯だけでなく、神経や血管が複雑に入り乱れているおり、どの組織も痛みを発生する要因になるため、間違った解釈をしないように時間をかけながら、正確な評価が痛みを改善するためには、とても重要になってきます。
③そこが原因となった根本的な問題を探す。
痛みが出ている組織を見つけ、改善したとしても根本の原因が改善されていなければ、再度同じ状態に戻ってしまう可能性や今より痛みが強くみられるリスクなどがあります。
なので・・・
今後の症状再発予防のために根本の原因を特定していき、治療を行なっていきます。
また、セルフケアや生活習慣の見直しをしていただくことで、早く痛みが取れるようにしていきます。セルフケアや生活習慣の見直しは痛みの早期改善だけでなく、今後痛みが出た時にご自身でコントロールできるようになるためにもとても大事なことですので、当院では特に重要視している点にもなります。
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よくある質問
変形性股関節症によくある質問をご紹介させていただきます。
①変形性股関節症を放っておくとどうなりますか?
変形性股関節症は、放置することで股関節の負担がかかり続け、関節を作っている骨が潰れてしまい手術の適応となる可能性があります。
なので、股関節の負担となっている要因を特定する必要があります。
股関節への負担となる要因としては、筋肉の硬さ、筋力低下、股関節以外の関節の可動性の低下などさまざまな影響により起こるため、個人の判断で対処するのは状態を悪化させる可能性があります。
そのため、早めに専門家にて体の評価をしてもらい、対処することが大事になります。
②変形性股関節症と診断されました。手術をしないといけないのでしょうか?
変形性股関節症には進行度というのがあり、末期の進行度となれば、リハビリや運動などでは対処できないため、手術の適応となります。
ですが、初期の進行度であれば、運動や負担の軽減を行うことで、進行は止まり、痛みも軽減していきます。
なので、初期からの治療がとても重要なので、もし痛みで悩まれていたらすぐに治療することをお勧めします。
③変形性股関節症はどういった運動をしたら良いでしょうか。
変形を早まる原因は負担の増加によって起こります。
痛みがあっても無理をしてウォーキングやランニングなどを行うと、股関節に負担がかかり続けることになるため、痛みがあるうちはストレッチや自宅でできるトレーニングを行いながら、筋肉の硬さを取ったり筋力向上を目指していくことが必要になります。
具体的にどういった運動を行った方が良いかは、1人1人低下している機能が異なる為、専門家にて適切な運動指導をしてもらうことが一番良いと思われます。
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参考文献
湯田健二 変形性股関節症の病態理解と臨床展開 The Journal of Clinical Physical Therapy 23 13-20, 2023.
園畑 馬渡ら 変形性股関節症の病態生理学と痛みの治療 関節外科 41(7): 782-788, 2022.
烏羽清治 整形外科運動療法ナビゲーションー下肢 14ー17 メジカルビュー社 2014